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HTML殺人事件

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 PoemVillageのトップは、それほど凝ったデザインではない。tableタグをうまく使ってコンテンツへのリンクと説明が要領よく割りつけられた機能重視のシンプルなページだ。

 『PoemVillage』のロゴの下には、このサイトの“村長”の言葉が書かれている。

 その下のInformationは、4日ほど前のものが最新だった。

<最近、規定違反の投稿が増えています。
新しく来られた方は投稿マニュアルを熟読されるようお願いします。>

 会員登録をすると定期的なメールのお知らせが来るが、ただアクセスしただけの単純なビジターでも投稿はOKだ。HTMLの知識があれば画像を使ったりwebならではのビジュアル的に凝った作品の発表も可能になっている。
 投稿板には4つのジャンルがある。メイン、恋愛、ジャパネスク、マニアックだ。ルネは、だいたい1日に1度、このサイトにアクセスするが、メインだけ覗くことが多い。

 『恋愛』は言うまでもなく恋愛詩、『ジャパネスク』は短歌・俳句、『マニアック』は村長によれば「メインでは飽きたりないと思う人、ユニークな作品で目立ちたい人、世をすねた人、のためのコーナー」だそうだ。ここは、けっこうルネの好みの作品が寄せられるのだが、投稿頻度が少ないので毎日はチェックしなかった。

 投稿数もアクセスも『メイン』が圧倒的に多い。だから、どの作品にも必ず幾つかは感想が書き込まれる。何かしら反応があるのはうれしいものだし、ここは、サイトの方針で、皆、好意的なレスを書く。
 最近、このサイトのアクセスが急激に増えているのは、そういったwebのインタラクティブな性質を生かしたことによって生じる魅力があるからだろう。

 ルネはアイコンをクリックして『メイン』に入った。1ページに50篇の作品タイトルが、上から新しい順に表示されている。そして、次の投稿があると、いちばん下のものから次のページに移されるようになっていた。

 上から2作品には、まだレスがついていなかった。
 3つめのカン太という作者の投稿は、感想欄にこんな書き込みがある。

 <当サイトでは1日1投稿が原則となっています。ご注意ください。
  守られない場合は、スタッフが削除することもあります。
  なお、新しく来られた方は、規定をよく読まれるようお願いします。
 rie@スタッフ>

 ページの中程あたりに同じ作者の作品タイトルがある。昼頃投稿されたものだ。

 ルネは、もう数時間も、あちこちのサイトを巡り歩いていたので、このページの50作品全部をチェックする気力はなかった。タイトルと作者名から、めぼしいものだけを読む。そして、以前から馴染みの詩人数人の作品に、簡単なレスを書いた。

 そろそろネットを終えて、TVでも見ようかと思ったと時、何気でひとつのタイトルに目を止めた。クリックして中に入る。

HTML
希羅々

PCの前で待ちつづけている
ディスプレイを見つめて
あなたも 私も
いつやってくるのかわからない何かを

来る日も来る日も
それを探していて
でも家にも街にも学校にも会社にも
それは
見当たらないから
私は
待ちつづけている

毎日ドアの前で郵便配達を待っているのは
とっくに飽きてしまったし

大人になったら叶う夢なんて信じてもいなくて

窓の向こうにはただ埃まみれの町があるだけ

ひとり呟くのは
誰の耳に留まることもない言葉

「私の居場所はどこですか?」

でも

たぶん 世界中が
それを
待ちつづけている
膨大な数の眼が
それを

それは何ですか?

それは愛ですか?
それは至福ですか
それは…?


作者のコメント

いつも暖かい感想をありがとうございます。

そんなに深い意味は無いけど、こんなタイトルをつけてみました。
HTMLってHyper Text Markup Languageの略でしたね。

じつは私、まだタグとか、よくわからないんです。
これから勉強して、早く自分のホームページを作りたいと思います。
ヒキコモリだから、時間はたっぷりあるのですが(^^;
時々、病気が出たりするので(謎


感想

     
  1. 私は、いつか来る王子様を待っています。:美鈴

  2. いつか、きっと、やってきますよ!!:いっちゃん

  3. 希羅々さん、ご無沙汰でした。やっとネットに復帰できました。相変わらず、心に響く詩を書かれていますね。:赤土

  4. HTMLを知らなくてもHPは作れますよ。ソフトを使えば出来ます。例えばHPビルダーとか、DreamWeaberとか。後者は俺も欲しいんだけど、高いです(泣:JIN

  5. サイコーです(はあと:タクヤ

 レスは20以上ある。
 この作者の名前は数ヶ月前から見かけていた。かなり速いペースで新作を投稿していて、なかなか人気を集めてもいるようだった。

 ルネは半ば無意識で、感想のフォームに書き込んでいた。

 <ディスプレイの向こうには天使も悪魔もいるのかもしれません。>

 Submitのボタンを押してから、ちょっと表現が良くなかったかなと思った。
 内容に対する感想になっていないことは、このサイトでは許されるにしても、これまで、この作者とコンタクトをもったことはないのだ。気心が知れているわけではないから、悪意をもった書き込みのように思うかもしれない。
 ルネは、まだ、それほどの体験は無かったが、ネットのテキストだけのコミュニケーションでは、意図したことが伝わらず、誤解を招いたりするのは、よくあることのようだ。

 パスワードを入れて削除しようかとも思ったが、けっきょく、そのままにした。
 疲れているのだろうか?何か、おかしな気分だ。

 ルネはPCを終了させ、TVをつけた。
 ニュースの時間で、相変わらず、一家惨殺事件に番組の多くを割いているようだった。

<惨殺された山本さん一家の遺体は司法解剖を終え、今夜は都内の祭儀場で、しめやかに通夜が執り行われています。会場には優香莉ちゃん、未比呂ちゃんのお友達をはじめ、多くの人々が訪れて一家の突然の死を悲しみ、残忍な犯人への怒りをあらたにしています。……>

 通夜の会場の、花に囲まれた4人の遺影。被害者の級友の園児たち。近所の人の談話。[*]次 [#]前 [0]目次


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