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HTML殺人事件
07
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昼間は溜まった本を読んでいた。
ネットを始める前は、買った本をすぐ読んでしまったものだが、最近は、どうも、そのようにいかない。集中力自体が落ちているとは思わないが、読書に関していえば低下しているだろう。集中力の質が変化しているのかもしれない。
ルネはTVで8時からの音楽番組を見て、それからPCに向かう。
エラーのアラートとは違う短いサウンドが鳴って、縦に細長いメッセのウィンドウが現れた。メッセというのは、インストールして登録するとメンバーにリストアップした同士でテキストや音声などでのチャットができるソフトだ。
takayoがメッセしようよと誘っている。昨夜、ルネがチャットをROMった詩と小説のサイトの管理人だ。
ルネは、とかく馴れ合いのコミュニケーションになりがちなチャットやメッセは苦手なのだが、別に拒む理由もなかった。
と言うより、昨夜のチャットでtakayoが言ったことに興味があったので、むしろ歓迎したい気持ちだった。
RUNEの発言 :
なんだ、takayoさんか(笑)
takayoの発言 :
なんだはないだろうっっっ、
ルネ君がめずらしくオンラインのメンバだったからね。
RUNEの発言 :
あ、メッセをオフにしとくの忘れてた。
起動してメールが来てなければオフだよ。
takayoの発言 :
だから、いつもメンバにいないんだw
あ、メンバにいたんだけど、
すぐ、スーと消えちゃったのが1度か2度ある。
そうかそうか。
RUNEの発言 :
ネットでも何でもだけど、
集中してる時、中断されるの
好きじゃないんだよね。
仕事中のこともあるし。
takayoの発言 :
あれ、ネットで仕事してるの?
RUNEの発言 :
まあ、ちょっとね。
takayoの発言 :
今、仕事してたの?
邪魔してるんじゃない?
RUNEの発言 :
構わないよ。
別にそういうわけじゃないから。
今夜は夫が出張で帰らないのだとtakayoは言った。子供たちは友人の誕生パーティーへお呼ばれだそうだ。
takayoの発言 :
ああ、私もね、ネット業界の人間だよ。
というか、今は失業しちゃったけど。
ところで、今ひとりで酒飲んでるんだよ。
キー打つのめんどいから音声チャットにしていい。
*******
チャットで言ってた希羅々と一緒の仕事とは、これだろうか?と考えながら、ルネはOKした。
サンキュ、もうタイプミスが多くてやんなっちゃうんだよ。
ひとりでお酒を飲んで酔っ払ってるからさ。
そうだ、一緒に飲まない?
といっても、これじゃご馳走するわけにいかないから、
ルネ君の自前でだけどね。
ルネはキッチンへ行って冷蔵庫からワインを取り出した。赤を飲むことが多いのだが、今夜はしばらく入れてあった白にして、ローテーションをこなすことにする。
PCの前に戻り、ヘッドセットを着ける。マイクの具合を調整した。
「ルネ君、何飲んでるの?」
「ワイン」
「私はオールドだけどね。去年のお歳暮で貰ったの隠してあったやつ。
いつもは安売り店で1.8リットル500円の日本酒だけど、今日は、鬼のいぬ間の何とかだから、少しは羽根を伸ばさなきゃね」
そして、呟くように80年代のJ-POPを歌う。
つばさーのおれたーえんじぇーる。
「子供たちが帰ってくるの遅いんだろうな。真夜中かな。友達の親が車で送ってくれるからまあ心配ないんだけどね。今どきは小学校高学年ともなるといっちょまえでさあ。ま、私も親に隠れて悪いことしてたんだから、しょうがないか」
しばらく会話に間が生じた。takayoは、また、小さく何かハミングしている。ルネが聴いたことのある昔のフォークみたいだ。題名は忘れた。言われれば思い出すだろうけど。
「何の仕事してるかなんて話題にするのは野暮なんだけどさ。今夜はなんか、わたしのしてたこと、話したいんだ。酔っ払いの戯言だと思って聴いてくれないかなあ?」
ルネは、いいよ、と答えた。
「うん、その仕事はね、もしかすると、というか、もうほとんど確実だけど、このあいだ亡くなった希羅々さんもやってたみたいなの。
それで、あんなことになったのを聞いて、私もちょっと落ちこんでるんだ。だから、誰かに聞いて欲しかったんだよね」
ルネはグラスのワインを空け、ボトルを取って注ぎ足した。takayoは話を続ける。
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