[PR]血液型で当たる無料占い:アナタと私の相性は?《無料診断》
HTML殺人事件
12
ame*
<P>
ルネの仕事は“ウェブコーディネーター”ということになっている。しかし、それは、あまり実体のない仕事で、たとえば検索をしても、web上に存在するその言葉の数はたいしたものではない。その中にはソフトウェアの製品名も含まれている。
意味から言えば、ウェブサイトを作る際の企画やクリエーター、エンジニアの手配、その他さまざまなアドバイス、ということになるのだろう。でも、実際はあまり大規模でないホームページ製作もするし、サーチエンジンへの登録代行や宣伝の書き込みをやったりする。
そのほか、ネット上での調べ物。これは取引先へのサービス的な場合が多いが、やっておくと見返りで何かの仕事が来るので、けっこう重要だ。
スパム関係は嫌いなので引き受けない。
何か肩書きがあると話が速いので、こういうものを考えたのだが、要するにネットの便利屋といったところだ。
携帯ページを作る仕事が入ったので、そちらのサイトをいくつか覗いてみる。モバイルサイトといっても多くはPCでアクセスできるのだが、やはりPCでは何だか間が抜けて見えた。
面白そうなページはシミュレーターでもう1度見た。このツールを使うとモバイルと同じ大きさの画面だし、ダイヤルボタンを押してジャンプするaccesskeyも動作する。
モバイルサイトを幾つか周って、コーヒーを淹れた。クッキーを口に入れ、IEを開く。ブックマークを眺めながらどこへ行こうかと考え、PoemVillageをクリックした。
BBSやフォーラムには小田原の転落死した女性が希羅々(ナツヲ)だという情報は見当たらなかった。
投稿板は相変わらず賑わっている。1ページにある50篇の作品が、ほぼ1日で次ページに押し出されて入れ替わってしまうペースで投稿がある。
takayoの話ではHP小僧をやっていたタツヒコだという“藤壺”の名前は、投稿者にも感想のレスにも見えなかった。もう3・4ヶ月は現れていないようだ。自分の興した事業に挫折したのだから、詩など読んだり書いたりしている気分ではないのだろうか。
しかし彼も、そのうち帰って来るかもしれない。今日も、何ヶ月かのブランクの後で投稿している詩人がいる。ルネは、その『物語を編む人』というタイトルにマウスを当てた。
クリックして作品ページに入る。
―――――――
物語を編む人
赤土
物語を編む人
夜となく昼となく
春となく夏となく
秋となく冬となく
物語を編む人
冷気が忍び寄る予感に
目を瞑り
耳を押さえ
世界のためという妄想
殉教者の悲壮感に駆られ
ただ ひたすら
触れることも出来ない
さして精緻でもないものを
それでも編みつづける人よ
淋しく悲しい人よ
昼は灼熱
夜は酷寒
世界は砂漠で
そこをさまよう私に
水分といえば自分の唾液だけ
長く伸びるわたしの影
それは そのまま黒い罪
そして希薄な大気の中に
投げつづける言葉
神は もはや信じないのですが
でも誰かに語りかけずにはいられません
けっして悪意はなかったのです
すべては自然の営みと言って下さい
そう言って私を救ってください。
消滅の願望だけが脳髄を浸しながら
現在を生き延びていくしかないのです
いつかは必ず死ぬ定めなのに
書き綴るのは 実は
物語とも認知されない
ただ 自分を慰める言葉たち
それを生きている証といえるのか
暗く寒い夜から避難した椅子の上
物語を窓の向こうに投げれば
誰か拾う人がいますか?
それとも向こうは ただ
空虚な世界
あるいは・・・
200X年01月17日
- この作品の著作権は-希羅々-さんに帰属します。
- 無断転載は禁止します。
――――――――
作者のコメント
――――――――
みなさん、ご無沙汰です。
ちょっと事情があって、しばらく、こちらに来れませんでした。
また時々参りますので、以前のようによろしくお願いします。
――――――――
感想
――――――――
- 祝 赤土さん復活:Kenya
- おひさです。就職活動がたいへんで、なかなかここにも来れませんでした。久しぶりに覗いたら赤土さんの作品がありました。嬉しいです。:Peeスケ
- 以前、読んだお子さんへの愛情が溢れた詩も感動しましたが、これも孤独感のようなものを感じて好きです。:たえこママ
- 赤土さんは、きっと僕より年齢も上で人生経験が豊富なんでしょう。赤土さんの作品に触れるたび、僕は、まだまだ人生を勉強しなければと思います。:輝義
- 赤土さん、復活おめでとうございます。私は赤土さんの詩では会社からの帰り道を書いたのが好きですが、これもとてもいいと思います。:e-ko
・
・
・
赤土氏は昨年暮れ、久しぶりでPoemVillegeの投稿板に感想を書き込んでいたように記憶している。
そういえば、希羅々と赤土氏は、お互いに感想などをよく書き合っていたようだったなとルネは思った。でも、希羅々の死について赤土氏が何か書き込んでいるのは、PoemVillegeの中には見当たらない。
ぽえ村では彼女の死を悼む書き込みも多かったが、名前を出すような直接的な表現は憚られていたので、それを他のサイトで目にしない限り、気づかなかったのかもしれなかった。
ルネは、そのままIEで、ちゃんねる・ぜろにアクセスした。
専用ブラウザと違い、最初のページではスレッド一覧が上の方しか見えないのだが、ニュース板に小田原の女性転落死のスレを見つけた。
<【自殺?他殺】小田原の女性転落死を再捜査>
昨夜立てられたスレだが書き込みは100に満たないから、あまり注目を集めていないようだ。投稿の間隔も長くなっているので、そのうち下に行って目立たなくなり、消えてしまうのではないだろうか。
- 72:私も匿名さん
- なんだ、メンヘル系か。これは自然淘汰。
- 73:私も匿名さん
- 嗚呼、貴重なマ○コが…。
- 74:私も匿名さん
- これはDQNどもが被害者をレイプしようとビル屋上に拉致しますたが、騒がれたため、突き落としたものと考えられまつ。地元の珍走団を調べれば犯人がいまつ。
投稿の内容も、これといって注目に値するものはない。心の病を茶化した差別的な発言や、セクハラ的発想のもの、犯人をほとんど妄想的に推理するものなど、このサイトにはよくある論調がほとんどだった。
ルネはひと通り読み終わったので、そのページをリロードした。
読んでいる間に書き込みのあったスレが上がって来ているので、一覧は、かなり変化している。
[*]次 [#]前 [0]目次