HTML殺人事件

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 次の朝、ポエム板には、まだルネの求めた情報は書き込まれていなかった。書き込み自体が昨夜のままで止まっている。
 その日は一日、携帯サイトを作る仕事をした。携帯サイトは単純なので、ページ数は多いのだが、夕方には一応完了した。

 夜になって、またポエム板を見たが、朝と同じ状態だ。それで、ルネは議論板に移動して、タツヒコ関連のスレッドを開いた。昨日から、その後数人が書き込んでいるが、これといって注目に値するものはない。
 だが、そこにある書き込みを眺めているうち、ルネはふと、あることを思いついた。暇つぶしに、それを実行してみることにする。

 アクセスパルはHP小僧が部数を飛躍的に伸ばし始めた頃に取得したドメイン“hp-kozo.xxx”を継続して使っていたようだ。それで、まずトップページへアクセスを試みた。
 ブラウザの応えは予想通り「ページを表示できません」だった。

 次にドメインから登録者の情報を調べてみることにする。これは検索サービスを行っているサイトのフォームに“xxxxx.com”とか“xxxx.net”…のようなドメイン、あるいは“24.135.102.9”のようなIPを打ち込むと、登録者名や有効期限などの情報を見ることができるのだ。ただし、業者が代理になっている場合は、わからないこともある。

 ルネは検索窓にHP小僧のドメインを入れボタンを押した。

[Domain Name] HP-KOZO.XXX
[登録者名]水野達彦
[Registrant]Tatsuhiko Mizuno

[登録年月日]2000/07/25
[有効期限]200X/07/25
[状態]Active
[最終更新]200X/07/25 00:30:00 (JST)

 このほかにContact Information: [公開連絡窓口] として、名前、住所、Email、電話番号がある。

 しかし、ここで特に変わったことは見つからない。
 有効期限は今年の7月になっていた。でも今、確認したように少なくともトップページは削除されている。Takayoの話では、スタッフのログインページもアクセスできないそうだ。

 次に串情報のサイトへ行った。“串”とは“プロクシ=proxy”からきた言葉で、プロクシサーバーを指すネットでの通称だ。プロクシサーバーは、アクセス制御やトラフィックを軽減する役割をもっている。
 しかし、この過程を“串を通す”と呼ぶような連中がプロクシに期待するのは、匿名性という、もうひとつの要素だ。

 ページにアクセスすると、時間、ブラウザ、OSをはじめ、Hostの名前、HostIPなどの環境変数といわれる情報がサーバーのアクセスログに残ってしまうのだが、プロクシサーバーを介してアクセスすると、ログに残るのはプロクシの環境変数になるので、自分の重要な情報を知られずにすむ。

 別に被害を及ぼすわけではないし、もう会社は消滅してタツヒコも死んだのだから訴えられることもないとは思う。でも、これから行うことは不正アクセスにあたるかもしれないので、ルネはプロクシを介して自分の姿を消し、慎重に事を運ぶことにしたのだ。

 信頼できる串情報のあるサイトへ行って、串のアドレスを手に入れる。海外にあるサーバーだ。プロクシサーバーには自分の情報が残るから、アクセスを辿れば、結局はわかってしまう。わかりにくくするために複数の串を通すやり方もあるが、そこまでする必要はないだろう。サーバー管理者は、めったなことでは部外者にログを見せないし、何の実害もない侵入程度で外国まで捜査に行くほど警察も暇ではないはずだ。

 ルネは次に、まず、串を通さずにアクセス解析のページにログインした。プロクシサーバーを通るとパスワードがログに残ってしまい、管理者に読まれる恐れがあるからだ。
 アクセス解析サービスはページにソースを貼るとアクセス推移や生ログの閲覧をすることができるもので、無料のサービスも多い。生ログを見ると上で述べたような様々な環境変数が把握できるので、ビジターがどのページのリンクから来たかも知ることができる。

 ルネは、こう考えた。
 彼がHP小僧に掲載依頼をしたのは去年の3月だが、Takayoは、コメントを付ける作業が7ヶ月遅れだったと言っていた。だから、ルネのサイトをコメントスタッフが見たとすれば10月ということになるだろう。それがアクセス解析のデータに現れていないだろうか。
 掲載依頼時のチェックだけではねられるサイトもあるのだが、それは怪しいビジネスや、あまりにも内容のないサイトだろう。ルネは自分のサイトが、そこまでレベルの低いものではないだろうと思っていた。だから、10月頃の生ログを見ればHP小僧からのアクセスが見つかるかもしれない。それは、たぶん編集システムからのものだろう。
 そして、ちゃんねる・ぜろの書き込みによるとHP小僧のシステムは、ひじょうにレベルの低いものだったらしいから、もしリンク元のアドレスがわかれば、そこからシステムに侵入が可能かもしれない。
 もっとも一般的にはセキュリティー上の配慮がなされ、このような方法はとれないよう、何らかの措置がとられている。
 だからルネは、それほど期待していたわけではない。たぶん駄目だろうが、ちょっとした暇つぶしのつもりだった。

 ルネの使用しているサービスでは、生ログは4ヶ月前のものまでしか保存されていないが、あるとすれば、たぶん10月だろうから、今、調べれば問題なかった。
 10月の生ログを30日から遡って見ていった。19日のページでルネはhp-kozo.xxx”の入ったURLを見つけた。cgiのページのようだから編集システムの中だろう。
 ルネはURLをドラッグしてメモ帳にコピペした。管理ページからログアウトする。

 串の設定はIEの“ツール”からできるが、アドレスを打ち込めば、後は一発でプロクシを通せるソフトがインストールしてあるので、それを使った。

 しかし、ページは表示されない。
 接続中の白い画面の状態が数分続いた。やはり、もうサイトがすべて削除されたのかもしれなかった。だが、ページが見つからないという表示が出ないので、ルネは、それまで待ってみようと思う。

 メモ帳にコピペしてあったURLにアクセスを試みる。

 しばらくして、やっと、ページが表示された。
 上から順にサイト名、URL、管理人のメールアドレス、そして、管理人の書いた紹介文が並び、その下にスタッフがHNとコメントを書きこむフォームがひとつのボックスで、それが1ページに20サイト分並んでいる。

 ルネは上から6個目に、自分のサイト『Runetic』の名前を見つけた。

<詩のようなもの、あるいは、どこにもない洋楽の対訳。オリジナルmidiもあります。>

 紹介文は、コメンターが自分のサイトをどう感じるのかに興味があったので、あまり具体的な表現を避けた覚えがある。

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