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HTML殺人事件

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</TR>


 システムに侵入はできたが、別に何があるというわけでもない。ページの最下部までスクロールして、<NEXT>のボタンを押す。
 動作が重くて、すぐに次のページには移らない。

 『バリハイ』http://www.xxxx.ne.jp/~barihai/
<バリ島に移住したKeikoと夫が現地での生活を書き記す日記が好評です。二人で厳選したバリのエスニックグッズも販売してます。>

 『ファンファンルーム』http://fanfan.xx.xxxxx.co.jp/top.html
<管理人efoが書いたファンタジー小説を発表しているHPです。ユニコーンの秘宝を探して旅する少年3人の冒険と友情を描いた作品など。ぜひ読んで下さい。>



 いくつかのサイトの紹介文を読んだ時、やっとページが代わる。

 一般的には串を通すと重くなるのだが、それだけでは、こんなにひどくならない。サーバーの状態が悪いのかもしれないが、やはりシステムに問題があるのではとルネは思った。たぶん普通の状態でも相当重いはずだ。

 ルネは表示の重さに閉口しながらも、次のページ次のページと進んでいった。4ページ目の途中からは、もう、各サイトにコメントのついた表示がなくなっている。ここで、HP小僧は活動をすべてストップしたのだろう。

 最後のページへ行きつくには、それから1時間以上を要した。そのページには6サイトの情報しかなかった。

 最後のサイトはタイトルとURLだけで、管理人のメルアドや紹介文の欄は空白になっていた。
 それは、こんなタイトルだった。

 『人間は表現する葦である』

 そのサイトの部分は、ルネが今まで見てきた編集システムのページの中で、何か違和感のあるものだった。それまでのページでは必ず管理人のメルアドと紹介文の欄は埋められていたのに、ここだけは、その2点が空白になっている。

 HP小僧で紹介される時のコメントはスタッフが書くのだから、管理人の紹介文がなくてもいいとは言えるだろうが、メールアドレスがないのはおかしい。ルネが掲載依頼をした時にも、投稿フォームにメルアドは必須とあったのを記憶している。
 それから、URLも、最後がconfes.htmlとなっていてトップページを表わすものではない。投稿規程には、必ずトップページのURLを記入するようにと書かれていたと思う。同一サイト内のいくつものページで掲載依頼してくるのを封じるためだろう。
 このサイトに関しては、どうもおかしい点が多いようだが、チェック漏れなのだろうか。

 ルネは、その受付日が12月25日になっていることに気づいた。その前の『りえこママの幸せレシピ』というサイトは10月23日受付になっているから、そこには2ヵ月の間隔がある。その頃にはもうアクセスパルはなくなってしまっているのだから、HP小僧も、もちろん活動してはいないのだ。
 それにタツヒコの死亡時期だって11月ということなのだから、その頃は当然、この世にいない。

 管理ページのパスワードを知っているスタッフが、何かの理由で『人間は表現する葦である』をここに加えたのだろうか?しかし、もう、ここに入って来る人間はいないだろうし、システムをチェックする必要があるとも思えない。

 このタイトルは、もちろん、フランスの思想家、数学者、物理学者、パスカルの主著『パンセ』の中の「人間は考える葦である」が元ネタだろう。とにかくサイトを見てみようとルネは思った。
 マウスポインターがURL部分に触れると手の形に変わる。ルネはクリックした。

 そのページの表示には、それほど時間がかからなかった。ひじょうにシンプルということもあるが、ダイヤルアップの頃の表示時間程度だ。やはり、あの編集システムのページが重いのは、スクリプトの書き方に問題があるのだろう。

 フリーのHPスペースに作られたサイトなので上下に広告バナーがある。メインの部分は白の背景に黒いテキストで、改行のない、詩のようなものが書かれていた。他には何もない。


TT夢 の圧 力に歌 ふ造花 た ち青い船着場 と蜜の地 図そし て破壊す るまだ 固有 な少 女の嘘 は森に繁 茂するその理 由狼男よ白き 子供らの溶 鉱 炉に 星と偽 詩人が重なり佇 む暁


 あまりにも単純なつくりなので、画面のあちらこちらをドラッグしてみた。文字色を背景と同じにして隠していないかと思ったからだ。もし、そういう仕掛けをしていた場合、これで浮き出すのだが、そういうこともないようだ。

 ソースを見たが、こちらも特に変わったことはなかった。上下にはバナーのスクリプトが挿入されていて、“人間は考える葦である”が<TITLE>と</TITLE>のタグに挟まれている。
 単純に<HTML><HEAD>で始まるソースで上下には広告バナーのスクリプトが挿入されているが、HTMLのバージョン宣言やMETA情報は記述されてなかった。しかし普通の場合には、別にそれがなくても、まず支障はないということだ。
 上のような情報がないから、このページの作者は、HP製作ソフトを使わず、テキストエディターに生のソースを書いたのだろう。簡単なソースだからメモ帳を使ったのかもしれない。


TT

夢 の圧 力に
歌 ふ造花 た ち
青い船着場 と
蜜の地 図
そし て破壊す る

まだ 固有 な
少 女の嘘 は森に
繁 茂する
その理 由
狼男よ

白き 子供らの
溶 鉱 炉に 星と
偽 詩人が
重なり佇 む暁


 行末に
タグを入れないから画面では繋がって表示されてしまう。上では冒頭の“TT”の意味がわからなかったが、タイトルか、あるいは作者のHNなのだろうか。
 </BODY></HTML>の前の行にはセンタリングを閉じるタグがあった。上にセンタリングのタグはないから消し忘れたのかもしれないが、まあ、これが残っていても表示に影響することはない。
 まだ製作中のページをサーバーにUPしたようにも見えるが、ルネには何のためなのか想像がつかなかった。

 ルネは、いちおう、そのページを保存しておいた。フリーのスペースは、一定期間更新されないと削除されてしまうところが多い。

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