
HTML殺人事件
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</CENTER>
ルネは『表現する葦』の本文をドラッグした。“Ctrl”と“C”のキーを同時に押し、反転している部分をコピーする。
投稿ページに移動して、フォームにそれを貼りつけてみた。でも、これだけでは元と同じで、何の変化もない。それで、さっきふと気がついたことをやってみようと思った。
ページのソースにあった</center>は“<”と“>”のタグで挟まれているからブラウザでは表示されなくて、また、このタグひとつだけではセンタリングが動作することもない。<center>と</center>に挟まれた時に、その部分が中央に寄せられるからだ。
文章をセンタリングしてみたら、何かがわからないだろうか。
この投稿ページには左右に寄せたりセンタリングすることなどができるメニューがあった。「隠された謎を解くには再投稿してみるのも、ひとつの方法。あなたが何かを変えると…。」というコメント欄に書かれていたことも、これを示唆しているのかもしれない。
センタリングを選択して“Preview”のボタンを押した。これだと、どのように表示されるかを確認できるが、実際に投稿されるわけではない。
夢 の圧 力に
歌 ふ造花 た ち
青い船着場 と
蜜の地 図
そし て破滅す る
まだ 固有 な
少 女の嘘 は森に
繁 茂する
その理 由
狼男よ
白き 子供らの
溶 鉱 炉に 星と
偽 詩人が
重なり佇 む暁
ルネは、それをしばらく眺めた。もうこれで、だいたいはわかったのだが、もう一度、フォームのページに戻って、文章全体をタグで挟んだ。
<TT>と</TT>。
文字を等幅にするタグだ。通常は文字によって微妙に幅が違っているのだが、これを使うと桝目に書いたように文字ごとの幅が揃えられる。
“Preview”のボタンを押した。文字は縦の列でも、それぞれ上から下に一直線に並んでいた。
やはり、自分の推測したとおりだったとルネは思った。あのサイトに書かれていたTTは誰かのイニシャルやHNではなく、等幅のHTMLタグを指し示していたのだ。
ルネはメモ帳を開いて、中央の列の文字を上から下の順で並べてみる。次のようになった。
圧・花・着・地・破 固・嘘・茂・理・男 子・炉・詩・佇
それぞれの読みを書いてみる。
(あつ)(か)(つき)(ち)(は) (こ)(うそ)(も)(り)(おとこ) (こ)(ろ)(し)(たたず)
「歌 ふ」や「白き」という表現があるので、この文章は旧仮名遣いで書かれる方がふさわしいのかもしれない。そうすると、“おとこ”は”をとこ”になるわけだ。そして、読みの最初の文字を並べると次のようになった。
あかつちは こうもりを ころした
“赤土は 蝙蝠を 殺した”というようにも解釈できる。
赤土と蝙蝠のどちらも、PoemVillageで見かけたことのあるHNだった。二人の間に何かトラブルがあったことを述べているのか…。でも、この作品の作者名は殺された方の蝙蝠になっている。
けれども、他の誰かが蝙蝠の名前で投稿することもできるから、実際に赤土が蝙蝠を殺害していて、それを知る者か、あるいは赤土自身がこれを書いた可能性だってないことはない。
しかし、HP小僧の編集システムの中に、あのページのデータがUPされていたのは、どういうことだろう。その頃すでにメルマガは廃刊になり、主宰していたタツヒコも、この世にはいなかったというのに。
例えば社会的な生命を奪うというような意味で“殺す”と表現している場合もあるだろう。でも、そうだとすれば、何かを告発する目的があるのだろうか。また、誰に対して、それを訴えようとしているのか。
その時、サウンドが鳴り、小さなメッセージボックスが現れた。メールの着信を告げるサインだった。
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