HTML殺人事件

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 三島から東京までは1時間しかかからない。
 PCのスイッチを入れ、起動する間に着替えをした。もう乾いてしまっているが、山の上りでだいぶ汗をかいている。


 ぽえ村の投稿板は相変わらず賑わっていた。でも、そこで見られる顔ぶれは少しづつ変化しているようだ。以前は速いローテーションで盛んに投稿していた常連たちも、最近は時折、姿を見せる程度になってしまっている。
 もうすぐ新年度になる。進学や進級を機会にPCやネットを始めるのも多いだろうから、ここにも新しいメンバーがどっと入ってくるかもしれない。

 ルネは投稿の一覧に“伯爵”というHNを見つけた。HelterのBBSに時々書きこみがあった記憶がある。作品は『アンダルシアの猫』というナンセンスのようなアドリブで書いたようでもあるものだった。ブンガク的な雰囲気はあるのかもしれない。
 サイトURLをクリックした。

 開いたページはブログで、書かれた日付を見ると1ヶ月以上前だ。更新は平均すると月に1回もないようだった。そういえば、投稿されていた詩もコメント欄に高校時代の作とあった。だが、もしリアルな生活が充実していて楽しいのなら、あえてネットジャンキーになる必要もない。

 伯爵の徒然なるBlog
 黒枠

最近、俺がweb上で知ってる人たちに訃報が相次いだ。メールやチャット、掲示板での付き合いばど直接関係のあった人もいるし、知り合いの知り合いといった人、投稿された作品を見たりHPを覗いたことのある人などさまざまだが、まるで1960〜70年代にロックのミュージシャンが次々死んでいったのを彷彿とさせる出来事のようだな。
えーと、調べてみたよ。
ジミ・ヘンドリックスは1970年9月に死亡。ジャニスジョップリンはそれからちょうど1ヶ月後にこの世を去っている。その前年の7月にはローリング・ストーンズのメンバーだったブライアン・ジョーンズが、自宅のプールで溺死体となって発見され、Doorsのジム・モリソンはジミヘンやジャニスの翌年7月にパリで死亡。
まあ、ちょっと後になってDeep Purpleのトミー・ボーリンとかプレスリーとかマーク・ボランも死んでいるわけだ。

しかし、なんかこのあたりの時代って華やかな感じがするな。
聞くところだと60年代あたりには占星学でいうアクアリアン・エイジの始まりがあったんだとか。春分点の実際の位置は少しづつ移動するので、古代にはおひつじ座にあったのが、その頃からみずがめ座に入って、人類にとって大きな変革の時期だったとか…。
まあビートルズなんて、このあたりで出てきてるが画期的だものな。この頃確立されたロックのかたちが今に至るまで続いてるわけだしね。うーん。

ということで、今また時代の転換期。21世紀のカルチャーをリードするのは詩なのだから、かつてのロックシーンにおけるミュージシャンの死みたいなことが詩人さんたちの間で起こっているのかな。なんてちょっと勘違いしてみたり(苦笑

ところで、ネット詩関係の方がたの死因は報道されているところでは自殺が多いようだね。無理心中らしいのもあるが、これも含めれば、だいたいが自殺……。
俺は、ぽえ村に投稿している人たちをはじめ、ネット詩人さんのサイトを暇つぶしにしばしば覗いていたのだが、そこでよくあるのが精神科や心療内科に通院しているってことだった。
ま、日記にカウンセラーとのやり取りを書いたり、飲んでる薬のリストがあったりするサイトは詩人さんに限らず珍しくないね。おれもネットサーフィン(死語)してるとよく見かけるよ。
自分の周囲ではそういう治療を受けている人など、ほとんど聞かないんだがね。いや、実は案外多いのかもしれないな。日本ではまだ心の病気に対する偏見がかなりあるからオフレコにしてるのかも。じつは周りにいっぱいいるのかもしれないね。

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 60〜70年代に自分はまだ生まれていない。ロックのようなサブカルチャーは、自分くらいの年齢だった父親がリアルタイムで体験しているはずだ。今日はやけに父を連想することが多いとルネは思った。もしかして彼が世を去ったりしているのだろうか。病院か路上か人里離れた場所か、とにかく世界のどこかで。
 ルネは、そういう虫の知らせのようなものが存在することを否定するつもりはなかったが、この場合は、そういうものでないような気がした。そして、サイトからサイトを巡るうちに彼の想念の中にあった父は、いつしかフェイドアウトしてしまう。

 希羅々、水野達彦、高瀬川麗佳、darkblue、Helter。Helterと一緒に練炭自殺したのがトリルかどうかはわからない。
 ネット詩関係に限って短期間にこれだけの者が世を去っているが、そのことをちょっと多いと思ってはいても、それ以上の疑問を抱く者はないようだった。
 でも、takayoから得た情報では、この中では何ら関係のなさそうなタツヒコも
希羅々と繋がりをもっている。だから自分は、そこに地下茎の存在のような何かを感じて好奇心をもつのだろうか。
 ディスプレイの奥に深い陥穽が存在するような、妄想とも幻覚ともつかないものがルネの意識に広がっていった。


[To be continued]
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