HTML殺人事件

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コノ セカイニ アイヲ
    Helter

この世界のどこかで
誰かが手首を切っている
彼女の足元にしたたり落ちる血液
ちぎられた睡眠薬のパッケージの山
WEBの日記に書かれたSOS

相手かまわず送った被害妄想のメール
ひとりよがりで勝ったと思い込んでいる
でも誰も気にとめず即削除 レスも来ない
そんなもので傷つくおめでたい奴はいないぜ
地球のどこかでは必ず戦争が起きているのに

コノ セカイニ アイヲ
コノ セカイニ アイヲ

都市の暗がりから湧き出す悪臭の泡
通りすがりのリーマンからせしめるのは
攻撃と破壊のアドレナリンに
ウォレットから引き抜く何枚かの紙幣
だけど もっとポジティブにもっと遠くへ

境界線を越えれば向こう側の世界がある
そのことを知ってしまうENFANT TERRIBLE
行ってしまえばどうってことないし
モラルと法律の重力圏を抜けれたその時
DNAの二重螺旋に隠れていた快楽が解放される

コノ セカイニ アイヲ
コノ セカイニ アイヲ

コノ セカイニ アイヲ
コノ セカイニ アイヲ

ごらん 生命は何とかして生き続けようとしている
拠り所になるならどんなものでも支えにして
頭が悪いことや病気や貧乏やねじれた性格
おぞましいルックスや前科やあらゆるコンプレックス
何でも好きなものをアイデンティティーにできる

そして みんなが還かえっていきたがる場所
始源ゲマインシャフトの母胎で安らぎを得るのは
みちづれなしに叶えられないことだから
傷口を舐め合いながらねばつく地獄に堕ちて行く

回転する青い地球と銀河を背景にシャム双生児は踊る
あたしのハートは阿修羅 あたしの神経は光ファイバー
すべての快楽にCongratulations !
あらゆる恍惚にCongratulations !

コノ セカイニ アイヲ
コノ セカイニ アイヲ

この世界にある椅子の数は限られている
もし あなたが席を空けたら
すかさず誰かがそこに座るだろう
時にはあなたを突き飛ばして
誰かがそこに座るだろう

コノ セカイニ アイヲ
コノ セカイニ アイヲ

コノ セカイニ アイヲ
コノ セカイニ アイヲ

コノ セカイニ アイヲ
コノ セカイニ アイヲ


 200X年3月21日XX時XX分XX秒

●この作品の著作権は Helter さんに帰属します。
●無断で転載することは禁止します。


 いつものサイト巡回の途中でぽえ村にアクセスすると、リストのいちばん上にこの作品があった。数分前に投稿されたものだったが作者がHelterであることが特別ルネの目を引いた。
 ネット上のさまざまな情報から、報道されている練炭自殺のメンバーの一人がHelterだと思っていたのだが、そうではなくて彼は生きているのだろうか。

 ルネは『コノ セカイニ アイヲ』という作品に既視感(デジャ・ヴュ)のようなものを感じた。だが、かつて、この詩を読んだことがあるというのとは少し違うような気もする。
 Helterのサイトは事件がメディアに乗って数日を経てから閉鎖されていた。彼の友人や親族が対応したのかもしれないし、フリーのHPスペースを使っていたから、そこの管理者の権限で処置したことも考えられる。3ヶ月間更新がないと削除される規定にはなっているが、まだ、その期間を経てはいないだろう。著作権侵害や他人の名誉毀損や、それほどの反社会的内容があったとも思えないが、警察から連絡があって閉鎖を暗に仄めかされたり、あるいは自主規制でそうなることは充分あり得る。あまりにアクセスが集中するのでサーバーの状態が悪くなり、他のユーザー様に多大なご迷惑がかかります…、とか、まあ理由などはどうとでもつけられるのだ。

 Internet Archiveに保存されているHelterのサイトを見たが、『コノ セカイニ アイヲ』は見つからなかった。デザイン変更の更新が頻繁だったので十数回分をざ見て回る必要があリ、ざっと回ってもかなり疲れたが、それを経るうちにルネの中で、既視感がどこから来ているのか、しだいに明確になってきていた。
 『表現する葦』という詩が投稿されていたのを見た時と似たような感覚なのだ。
 『表現する葦』は、それより前、“HP小僧”の編集システムから覗いたページにあったのを見ている。“HP小僧”はタツヒコが運営していたサイト紹介のメルマガで希羅々やtakayoはスタッフだったらしい。
 『表現する葦』には何やら暗号めいたメッセージが隠されているように考えられなくもないことをルネは発見している。

 ルネはぽえ村に戻って、もう一度『コノ セカイニ アイヲ』を見た。

 作者からのコメントは空欄になっている。

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 感想
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あ、Helterさんだ。おひさしぶりです。
相変わらずロックして快調に飛ばしてますね\(^o\)(/o^)/ :野呂

本当だ。Helterさんだ。突然HPがなくなっちゃって
変な噂も聞いたんですが、デマだったんですね。 :sasuke

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 翌朝、メールチェックをすると、その中に差出人がトリルとなっている1通があった。
 送られてきているメールアドレスはプロバイダーとの契約時に与えられたもので、ルネはそれを仕事上や公的な場合にしか使わないので公開していない。
 トリルがどうやってそれを知ったのか、少し訝しく思ったが、とりあえず、そのメールを開いてみた。


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