
HTML殺人事件
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「おお、これ、仲間がどこかで手に入れてきたんだがよお。賞味期限を2ヶ月過ぎてるけど、なかなかいけるな。明日香、その左から2番目の列の上から5番目のサムネイル。クリックして大きい写真見せろ」
柿ピーをバリバリ噛み砕きながら画面を見ていたネズミヤが、口の中に残ったものを少し飛び散らせながら言った。
「うーん、いまいちだなあ。もっと過激なのをと言いたいところだぜ。ACCESS-Palが管理責任を問われちまうからヘアヌードはさすがに削除だろうけど」
「ネズミヤさんのサイトの写真はどうやって調達したんですか?」とルネは尋ねた。
「ああ、あれか、検索に“女子高生”とか“ピチピチ”とかと“画像”ってキーワード入れて、引っかかったページからいただいたのよ」
「管理人に許可は取ったの」
トリルは次のサイトのBBSに書きこみを終えて閉じたので、また管理画面が表示される。
「それはなあ、おまえ、よく言うだろ?知らぬが仏って」
「でも、まどかって女の子が管理人のサイトってことになってるんでしょう?同じ子の画像が更新されるのを待って、またパクるんですか?」
「いやあ、別の子のでもOKよ。友達の写真載せますってことにすればいいさ。それでまたリピーターが増えればポイントに繋がるわけだ。ポエムもどっかのサイトで拝借しようと思ってたら、明日香がうまいこと書いてくれたからよお」
ネズミヤはルネのグラスに焼酎を足した。PCの画面に次のサイトが表示されている。
●daifukuのスーパーアフィリエイト術
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「ちっ、よく言うよ。しかしまあ、人間てのは浅ましいもんだなあ」
ネズミヤはポテトチップの袋の背の部分も力まかせに開き「食えよ、食え」とルネの前に置いた。拷問を加える刑吏のように見えないでもなかった。
「実際、アフィリエイトなんてそんなに金になるもんじゃないぜ」
ルネは、そのポテトチップを2・3枚食べてみたが、どうも油臭さを感じる。やはり賞味期限をだいぶ過ぎているのかも知れないが、まあ、腹をこわすようなこともないだろう
「例えばよう、兄ちゃん。あんた自分のサイトでこんなことやってるかい?」
「僕はやってませんけどね。だってクリックするのは、いいとこビジターの何百人にひとりでしょう?いや、何千人にかもですね。それで、その中で買ったり契約したりする人がどれだけいるか考えると、うちのサイトのアクセス状況では、たいして期待できないです。どんなビジターが来ても、ただアクセスが増えればいいってものでもないし。それに、ああいうバナーを貼ってるとウザがられたり、そこまでして金が欲しいのかって反感買ったりしそうですからね」
「そうだよな。アクセスのめちゃ多いサイトならビジターの0コンマ何パーセントかが買っても多少の実入りはあるだろうよ。けど、アフィリエイトしかやってないような糞面白くもないサイト、誰が見に来るかって」
ネズミヤはポテチを取って数枚いっぺんに口に入れた。食べ終わって「俺はこういうギザギザの入ってるのが好きなんだよ」と言ったが、油臭さについては何も触れなかった。
「だからな、ここらへんのサイトの場合、アクセスが期待できるのは同類のユーザーしかないのよ。管理画面に足跡があれば、どんな奴が来たのか興味が沸いてクリックしてみるからな。実は、そういうのを狙って、ずる賢い奴らは巡回ソフトを使って周ってる」
「結構うまく考えてるんじゃない?カウンターが回って悪い気はしないし。毎日来てるのをリストで見てれば親近感を感じるようになる。べつにセールスマンみたいにウザいわけじゃないし、どうせ買うものだったら、少しでもご縁のあるところでバナーをクリックしてあげようって気になる人もいると思うわ。無料のスペース提供だから、まともにサイト作ってる人だっているしね。結局最終的に儲かるのはACCESS-Palなんだろうけど」
トリルもひと休みなのか、グラスの液体をちょっと舐めてポテチを
1枚だけ食べた。でも、それだけで後は手を出さなかった。
ネズミヤは画面を一瞥して話し始めた。
「でもよお、情けない話だぜ。自分にしろ父ちゃんにしろ、いっぱしの堅気の職業についてるんだろう。会社からちょっとした給料は貰ってるだろうに、そこまでして金が欲しいのかねえ。ぶっちゃけた話、アフィリエイトなんて一日中パソコンに齧りついてても100円玉いくつかにもなんないような仕事だぜ。よくやってると思うよ。初めは良くても、いいことは続かないもんだよ。うーん、それだったらアルミ缶集めた方がいくらかましってもんかな。よくホームレスがやってやがるだろ?まあ、あれだってリヤカーいっぱいに集めても稼ぎは千円か2千円ってものなんだけどよお」
ネズミヤは顎の、白いものが少し混じった不精髭を玩びながら話を続けた。
「とは言っても、俺の仲間が町内会で集めたアルミ缶を持ってこうとしたら会長のジジイが現れてああ、これは町内会の財産だってんで警察を呼びやがってな。そいでもって、そいつは横領で訴えられちまったよ。アルミ缶集めなんてホームレスにとっては数少ない現金収入なのによう。まったく世知辛い世の中になったもんだぜ」
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