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HTML殺人事件

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538:三多摩を愛する名無しさん
 >>520
 >全国的規模の某大手カルトに絡んだ事件では、
 >施設の建設にからむ反対運動や強引な勧誘、寄付の強要などのトラブルで、
 >運動のリーダーや関わった地方議員などが謎の死を遂げたりしている。
 >ヤクザと親密な仲という噂もあり、この地域でも会員が多い。

 何の証拠もないことを書きこまぬように
 通報されますよ。
 私は、その大手カルトの信者ではありませんが、知り合いの会員の方から、
 事件の背後で某瑞○の会と某神聖○字軍が動いていると聞きました。
 と言っても、

 >内部に諜報機関のようなものを持っていたりするというから恐ろしいな。

 というわけではありませんよ。
 「天網恢恢疎にして漏らさず」ということです。

539:
 >>538
 >知り合いの会員の方から、(ワロタ
 法華信奉会の工作員に認定。

540:三多摩を愛する名無しさん
 このスレではカルト工作員たちが暗躍しているようですね。
 釣ったり煽ったり、お疲れさまです。

541:三多摩を愛する名無しさん
 >>541
 それって銭形さんのこと?

542:三多摩を愛する名無しさん
 コテハンを使ったり使わなかったり、
 書きこみのたびにIDを変えたりorz(爆

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 次の日“三多摩の話題について語るスレ”を見たが、ネズミヤが殺された事件に関係した書きこみはこの辺りまでで、後はラブホの情報交換や、ルックス、親のステータス、学力による高校のランク付けや、昔からの住人が自然に恵まれていたかつてを懐かしむ発言と、それに対するレスが続いている。

 ルネがちょっと目を留めたのは538の書きこみだった。これ見よがしに1文字だけ伏字にしてあるが、それぞれ瑞穂の会と神聖十字軍を指しているのは明らかだ。
 でも、事実だという根拠があるわけではない。でたらめを書いて混乱させるのを喜んだり、都合の悪い事実から人々の目を遠ざけたり、あるいは何らかの誘導を謀る関係者の工作ということもあり得る。

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 ポプラこと鈴本信紘のケータイに電話するのは公衆電話を使うことにした。ネズミヤのことがあったわけだし、自分のケータイや自宅の電話を使うのではあまりにも迂闊だろう。
 と言っても公衆電話の番号から位置を割り出すソフトがあることをルネはどこかで見た記憶があった。たしかチケット予約の時の裏技を扱ったサイトを暇つぶしに見ていた時だったと思う。
 ケータイをPCに接続して相手の電話番号を知るようなツールだって、どこかで作られていて、一般には知られていなくても、例えば公安とか工作員は使っているかもしれなかった。ポプラがそういった人間であるかどうかはわからないが、絶対違うとも言えない。
 源さんのメールではネズミヤのケータイから位置を割り出されたようだから、そういう相手ならどちらにしても居場所を把握されそうだった。でも、自分の電話番号を知られるよりはましだろうとルネは考えたのだ。

 というわけで、比較的人通りの多い場所にあるコンビニの公衆電話を使うことにした。相手がどんな連中かはわからないが、人目につく場所でいきなり襲ったりして騒ぎになるのは避けたいだろう。
 184を使えばこちらの番号を非表示にできるが、それだとポプラが良い印象をもたないおそれがある。不信感を生じさせては会話がうまく運ばないので、それは避けた方がいいとルネは思った。
 ポプラの就職先がどんな業種なのかわからなかったが、いちおう土曜日の午後7時にコールしてみた。

「はい、鈴本です」
「メールをいただいたルネですが、はじめまして」
 電話機とは半身になって不審な通行人や車に注意する。
「あ、ルネさんですか。突然のことで失礼いたしました。鈴本です。HNはポプラと申します」
 店の入口付近に数人の男女がたむろしている。活舌の悪い話し方をする茶髪の少女や、頭にタオルを巻いたりニッカーボッカー姿の土木作業員や解体屋や鉄筋工といった職種らしい連中で、二十歳前後のようだが中には顎鬚を生やした者もいる。
 いつもなら目障りな、いわゆるDQNたちだが、今日は別に気にならない。というより、そこにいてくれるとありがたい。
「私はHPを閉鎖して、近々プロバイダーとの契約も解除します。ネットは会社で見れますので。といっても仕事関係の調べものに使うくらいでしょうが」
 ヘッドライトがルネを照らした。駐車スペースにワゴン車が入って来る。逆光で中がよく見えない。まさかとは思うが、ヤクザだったら銃をぶっ放されることもあり得る。
「それで、あのメルアドも使えなくなりますので、携帯の番号をお知らせした次第です」
 ライトが消え、ドアが開いて女が下りる。反対側からは小学生くらいの子供。親子らしい。それを確認していて少し間が空いたが、ルネはポプラに尋ねた。
「今、電話、大丈夫ですか?お忙しいようなことは…」
「大丈夫です。今日は休日で、さっきまで本を読んでいたんです。仕事の関係で勉強しなければならない事が多くて大変なんですよ」
 ポプラは就職後の新人研修で仕込まれたような丁寧な言葉遣いで喋った。ルネは彼の話を聞きながら、ホラー映画に出てくる容姿は子供だが声音や口調が大人の人物を連想していた。
「いやあ、最近就職したんですが、実社会は想像してたよりきついです」
 ルネが喋り出さないないためか、ポプラはまるで沈黙を埋める強迫観念に取りつかれてでもいるように話し始めた。彼は実社会が学生時代と違ってきついと繰り返し、職場でのエピソードや家に帰ったら後は寝るだけという毎日を語ったり、高卒がこの業界でやっていくのはたいへんで、ニュースなどでは銀行強盗に身の危険も顧みず立ち向かって行く銀行員がいるが、たいてい高卒で、そうでもしなければのし上がれないだのだと言った。また、ニートやフリーターをカリカチュアライズした姿で語り、彼らは将来が不安で、自分はしっかりした職と収入を得て家庭を築きたいのだと話したようだが、それは何か意味のよくわからない弁解のように聞こえないでもなかった。
 ルネが電話したのはトリルについて話があるということだったからでポプラの愚痴を聞くためではない。だから、その時ポプラが喋った内容はルネの記憶にほとんど残らなかった。


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