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HTML殺人事件

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 自分の話をしばらく続けてから、彼はは我に返ったような少し気まずそうな感じで言った。
「ルネさんのフリーのお仕事というのもたいへんでしょうね。仕事がいつまで来るかわかりませんしね。まあ、特に最近のような世の中になると、そういうのは私たちのような銀行にしても同じなんですが」
 ポプラはルネの仕事を知っているようだ。おそらくトリルから聞いたのだろう
 とにかく、彼の就職先は銀行であるらしい。
「僕のはフリーというよりフリーターみたいなものですよ。あまりお金にはなりませんが取り柄と言えば、まあ、自由な時間があるくらいで…」
 ポプラはルネが個人でやっているのは大したもので、ITはまだまだ伸びる分野だから将来に夢がもてると言い、今はブログが全盛だが次は何になるだろうかとか、マーケティングや時代の流れを掴む話とか、法人の設立や各方面への人脈などを経営コンサルタントが講演でもしているように喋った。

「僕はそんなに大きくやるつもりはないですよ」
 ポプラの話を聞いていると胸の中に比重の大きい気体が降りてくるような気分になったので、ルネは彼の言葉を遮った。
「それと、そういうのは世の中によくあるやり方ですよね」
「ええ、でも、何の商売でも金は儲けなければ…」
 ポプラはルネが自分に話を合わせなかったのが少し意外なようだった。農耕民同士の会話は先に自分の考えを言った方が勝ちだ。二番目以降はそれに同調する意見を述べることしか許されない。
 社会人になって、そういう思考が身についたのだろうか。あるいはポプラがもともとそういう人間だったのかもしれなかった。
「もちろん僕も金は欲しいですけど、世間一般にありきたりのやり方ではつまらないですね」
「じゃあ、他にどういうのがあるんです?」
「好き勝手に自分のやり方でやって成功し、世の中にザマアミロって言ってやる。そうじゃなきゃリベンジになりませんよね」
「リベンジって、ルネさんは世の中に何か恨みがあるんですか?」
「いえ、特にこれといってないんですが。だから、そんなに大きくやるつもりはないって言ってるんです。まあ、今のところは」

 ポプラはしばらく沈黙した。
 彼は自分の作った話の水路に水が流れて行かないのを不満に思っている。目の前に姿があるわけでもなく電話線で繋がれているだけのポプラの内面に、その時ルネは感応していると思い、たぶんそれは正しかった。

「まあ、自由な時間があるのは羨ましいですけどね」  ポプラはすこし引き攣ったような声で言った。 「やっぱり、何をするにも時間が必要ですよ。創作にしても、女の子とつきあうにしても」  “女の子とつきあうにしても”とポプラが言った時、ルネはポプラが歪んだ苦しそうな笑みを浮かべているのが見えたような気がした。ルネとトリルがすでに男女関係のよくある手続きを踏んでいるのがわかっていると匂わせているのだろうか。彼のジェラシーのようなものを感じられないでもなかった。
 ポプラは、この話題について、それ以上、触れず、「時間があり過ぎるのはどうもね」と繰り返した。それは自分自身に確認しているようでもあった。
「あまり時間があるのも考えものですよ。それから頭がいいのもね。頭が良くて時間があるととんでもないものを引っ張り出してしまう」

それからポプラは、少し意味ありげに言った。
「まあ、Helterさんにしてもね」

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