HTML殺人事件

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[紙片5]

試験の日。まず、俺は教官の部屋に呼ばれる。笑顔で迎える将校服の教官。いつもの厳しい表情ではない。彼は椅子に座るよう勧める。背後のドアが開いて、入って来たのは事務服を着た若い娘だ。彼女は俺の前に液体の入ったグラスを置く。「どうぞ。一息で飲みなさい」教官は無表情で言う。その口調には遠慮などしているのを許さない強制力が感じられる。俺は軽く会釈してグラスを手に取った。液体はミックスジュースのようだが、少し薬品のような味お感じる。飲み終わってしばらく沈黙が続いた。教官は無言で書類のチェックをしていたからだ。小さな音量で音楽が流れていて、俺は自然とそれに耳を傾けることになる。バロックのような、数学的図形を思わせる曲だった。15分程して彼は腕時計に目をやり、ひとり頷いて顔を上げる。「では、試験です。これからあなたが案内される部屋にはある男がいます。彼は器物です。いろいろな意味で人間として既に失格しています。もし、あなたがこの試験に不合格の場合、あなたは次の受験者の器物になります。もちろん拒否した場合もです。わかりましたね」やって来た兵士は俺を地下のとある部屋に案内した。そこで器物が来るのを待っているうち、俺の意識に高揚感が満ち溢れてくる。さっきの飲み物の効果だということは想像することができた。俺は試験の内容を反芻した。要するにそれは、ここに来てから学んだ、というか訓練を受けた技術の集大成だ。器物をサンドバッグのように殴りつけたり、蹴りを入れたり、四肢の骨を折ったり、耳や鼻を刃物で削いだり、皮膚の上から内臓を掴んで握り潰したりした後、首を締めるか頚椎を破壊して息の根を止める。これらを手際よくこなすことも評価の対象だが、重要なポイントは器物に感情移入しないことだ。ノックの音がする。迎えが来たのだ。案内の下級兵士は俺の先に立って地下への階段を降り、ある部屋の鍵を開けてからキーを俺に渡し敬礼して去って行く。中にいた器物の顔には見覚えがあった。俺と一緒の行程を辿ってやって来た連中の一人だ。俺は試験を実行した。教官の部屋に戻ると、たぶん日本人ではない彼がアナウンサ―のような正確な日本語で器物の名前や経歴や家族関係などを記した書類を俺に読んで聞かせた。器物として処分されることとなった理由は日本に手紙を出して、同じ支部にいた信者の女性と連絡を取ろうと企てたからだそうだ。試験は計5回行われた。器物は教団の情報をマスコミに流そうとした信者や、信者同士で結婚したが夫のもとから逃亡しようとした女性や、器物と知り合いだったのでためらって試験に失敗した受験者や現地の政治犯だったりしたが、俺はすべてに合格点を取った。そして最終的合格を告げた後、教官は言った。「日本の法律では殺人などの凶悪犯罪の場合、国外での犯行でも国内での処罰の対象になります。だから、あなたが帰国してから、もし、ここでの行いが発覚すれば当局の追及を受けることとなるでしょう。仮に緊急避難的行為として法的な処罰を免れたとしても、あなたはとにかく自らの手で5回も殺人を犯しているのです。そのような人間が日本社会に受け入れられるのはひじょうに難しいでしょう。」その場には教団のある幹部も同席していた。彼は俺にこう言った。「メシアはすべてを理解しておられますよ。ただメシアにおすがりなさい。メシアのために働きなさい。メシアを喜ばせて差し上げることです。あなたを救うのはメシア以外にないのですから。わかりましたね。スンナム少尉」

[To be continued]
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