HTML殺人事件

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……はい、今、これを見ているみなさーん。このブログにはコメントを書いてもいいんですからーっ。さあ、ためらってないで、勇気を出して何か一言カキコしてみましょうね。……。

 午前中に書かれたブログの最後にこんなことが書いてあるが、文章の下を見るとまだcomment(0)だ。ルネは何だか管理人が、ひたすら他者との繋がりを求めてあがいているような印象をもった。
 このブログにも数日に一度くらいは書きこみがあるが、皆、自分のサイトに人を呼びたいアフィリエイターのもののようで、おざなりの感想が書かれている。
 自作詩は夫や子供や義母との日常や、パートの仕事や地域の人々との交流が題材だった。誰かを励ましたり癒したりする作品を目指していると書いてあるが、いちばんに励まされ癒されたいのは彼女自身なのかもしれないとルネは思う。

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 いわゆる現代詩系の作品が集まっているWEB同人誌。
 現実のどこにもないイメージの世界を作り出して、そこへ逃亡することが幾度となく試みられている。狂気というのは現実が耐えがたいものである時の避難先であり、身を隠す場所がなかったら人は死の中に逃げ込むしかないと精神医学の本に書かれていたのを思い出す。かれらが文字を奇形的に組合わせ陰鬱なイメージを織り続けるのは、とにかく死を避けるためなのだろうか。

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 かなり詳細に書かれたPoem Villageオフ会のレポートがあった。集まった面々の行動のディテイルから、カラオケで歌った曲やその感想まで書かれている。カラオケというのは往々にして自分が歌うことにしか関心がなく、他人の歌には興味を持たなかったりするものなのだが、この筆者はレポートを書く必要があって細部まで観察していたのだろうか。
 詩人たちは多くの場合、それぞれ個々で集まって来ているようだった。オンラインの投稿板でも日常の友人や知り合いに教えて連れて来る例は少ないような気がする。
 ルネは何かで読んだこんな事柄を思い出した。
 尾崎豊のコンサートチケットは1枚づつ売れたのだそうだ。つまり、彼のファンは友達と連れ立ってというより、それぞれひとりづつで足を運ぶ方が圧倒的だったらしい。
 ネット詩人たちにしても、日常の世界で何らかの意味で孤立した存在のように見えなくもない。

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 ペトロニウスの原作をもとにフェリーニが作った映画『サテリコン』では、主人公がローマ帝国をさまよい巡りながら、さまざまな人や事物に出会う。
 ルネは今、自分が幽体離脱して自らの肉体の背後に浮かび、サテリコンのようにネットの世界を彷徨している彼自身を眺めているような気がした。 
 もっとも、ここにあるのは必ずしも映画のようなかたちの享楽と退廃ではない。しかし、例えば表面的に一般市民の日常の姿をとっていても、水面下には鬱屈したものが満ち満ちていて、それはローマ帝国の退廃以上のようにも思えた。

 そうやってネットを経巡っているうちに、例の紙片の写真について、ルネの頭の中でだんだん整理されてきたようだ。

 紙片1〜7は、いずれも同じ手帖から破り取ったと思われるが、横書きで、それが縦長の写真の中の左に4枚、右に3枚配置されている。実際に番号が振られているわけではないが、左上から左下、続いて右上から右下という順序とするのが内容から見ても妥当と思われた。

 紙片1は、これを書いた当人と思われるスンナム(ハングル語による教団内部での名前)という男が教団に入った時の模様が綴られている。彼を誘い入れたのはオモニという女性だ。
 オモニは、スンナムが神の愛を得るためには彼が最も大切にしているものを放棄しなければ交換が成立しないと言う。ルネはこの辺りで、以前、文化人類学関係の本で読んだポトラッチを連想した。贈答の応酬が激しさを増すと、より価値のある自分の持ち物を破壊して優越を競うようになる北米先住民の習俗だが、神と人間との間にも贈与/交換の原則があり、また、それは世界の基本的なシステムであることがオモニによって語られている。

 紙片2は同僚であったミョンスクという女性信者との想い出だ。この頃スンナムは既に、神との交換のため封印した詩作を再開しているらしく、それをミョンスクに見せるのだが、彼女は、いったん神に近づいたものがそこから離れた場合、雷に打たれて死ぬという話を信じ、不安を感じているようだ。

 紙片3でスンナムは転勤を命じられる。彼を教団に入れたオモニは内部で出世しているらしい。彼も、軍隊式の階級制度での2階級昇進を告げられる。このことからは単なる転勤でない重要な事実であることが想像される。このカルトが神聖十字軍であることは後のに書かれているので、ルネは検索して調べてみた。そのような階級制度が存在するのは事実だった。


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