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HTML殺人事件
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ルネは時折、多世界のサイトにあるチャットルームを覗いてみたが、いつも入室者はなかった。
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ただ、この発言が上から下まで並んでいるだけだ。
一見するだけでは変わりがないように感じたが、数日に1回は、同じXの羅列ではあるけれど書きこまれた時間が新しくなっていた。チャットが行われているが、その内容を多くに知られないために処置したことが想像される。
とにかく、交わされた会話はすべて枠外に押し出されていたし、ログを見られるようにもなっていないから、どんなことが話し合われていたかを知ることはできなかった。
ルネは1日に2・3度だったチャットルームへのアクセスを、もっと頻繁に行うようにした。
入室者がいて会話が交わされているのに行き会ったのは、翌々日の深夜だった。
メンバー:3
ROM:1
村下冬樹>
ところで、私は詩のことに疎いので初歩的な質問かもしれませんが、現代詩って、どういうものをいうんですか?
タダシ22号>
第2次大戦中には詩人たちが戦争に協力したことがあったので、その反省から、政治的なこととは距離を置いたり個人の内面を描くような傾向が出てきて、まあ、「戦後詩」というような呼ばれ方もあったんですが、要するにヒッキーなスタンスを取るようになって、今に至るのが現代詩ということでしょうか。
webmaster>
要するにヒキコモリなんだよね。キモいわけだ(笑
村下冬樹>
キモいといえば、ポエトリーリーディングとやらで、冴えないルックスの連中がぼそぼそ声を出してるの、あれはひじょうにキモい。と私は感じますw
チャットの画面は30秒毎に自動的に更新される。ディスプレイが瞬きするとROMの数が2に増えていた。
タダシ22号>
聞かせようとか見せようとか工夫してる人も、いることはいるけどね。
webmaster>
今は亡きレイカも、よくイベントに出てたんじゃなかった?
タダシ22号>
イベントって言っても、ほとんどがキャパ数十人の場所。学校のクラスでやってるようなもんでしょう。それで、武道館か東京ドームにでも出たような大した気になって舞いあがっちゃってるわけだけど(爆
村下冬樹>
客が数十人じゃライブハウスでも、ごく小規模なとこですね。それじゃ来るのは顔見知りばっかりでしょう?
タダシ22号>
出版社におだてられて経費自分持ちの詩集を作ったり、細々と同人誌を続けてるのと同じようなものですね。
webmaster>
ポエトリーリーディングってWEBで誰かが言ってたけど、あ、もしかして僕か。まあ、音楽とか演劇の才能があったら、そっちへ行くだろってこと。そっちの方が何かを伝えやすいしひとやま当てれば有名になって金も入ってくるし。
タダシ22号>
それで激怒したレイカが宣戦布告したんでしょう?
野ざらし>
皆さん今晩は。
野ざらし>
その時、レイカさんが頭に来た相手はHelterさんですよ。
タダシ22号>
野ざらしさん、お久しぶりです。
野ざらしが入室して、ROMは2名から1名に減った。ルネの他にもうひとりいたROMは彼だったようだ。
webmaster>
野ざらしさん、今晩は。それで、レイカはHelterさんに刺客を送った。それは「現代詩ノート」の投稿欄によく採用されてる某女史。でしたね?
webmaster>
「現代詩ノート」の常連は埼玉県三郷市の会社員沢野厚子さん(24)。
村下冬樹>
「現代詩ノート」には本名で投稿してたんですか。
タダシ22号>
紙メディアでは、そう言う詩人、わりと多いね。でも、多世界さん、なかなかの情報ツウですね。
webmaster>
「週刊文潮」で最近読んだよ。タイトルは「インターネット自殺者たちの横顔」だったかな。名前はイニシャルで書いてあったけど、本名は、あの自殺(?)があった時報道されたし、今でも検索すれば、すぐに記事は見つかる。文潮ではSAってなってるけど、本名のイニシャルそのままだから、たぶん、彼女なんじゃないかな。
村下冬樹>
一緒に死んだということは、刺客に赴いて、そのうちに二人はできちゃったんですか?
webmaster>
そこはまだ想像の域を出ないから…。
ルネはwebmasterこと多世界の発言が、何か意味ありげに感じられた。
多世界は自分に何かを知らせようとして話題を誘導しているような気がしないでもない。
管理人である多世界はルネの環境変数を見ているのだろうか。それによって特定するまでには至らなくても、ある程度、誰なのかを類推しているのかもしれないとルネは思った。
村下冬樹>
沢野厚子はどうしてレイカの刺客になったんでしょうね。
webmaster>
フィクサーがいたみたい。
村下冬樹>
フィクサー…、ですか?
webmaster>
それはそうと、まあ、家元のお嬢様は、それなりにぐわむばってたんじゃないかしら。
タダシ22号>
まあ、いろいろ頑張ってたとは言えるでしょうが。
webmaster>
うん、「女を武器に」ってやつで(笑
多世界は自分にある事実を知らせるという彼の書いたシナリオを進行させているのだろうか。そうだとすると、自分の役割は何なのだろうとルネは考えたが、同時に、実際、そんなことがあるのかという思いも半分は存在した。
[To be continued]
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