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HTML殺人事件

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「オフ会にも行ってみたよ。仕事の帰りみたいでスーツ着てる人が多かったな、学生にはカジュアルなのもいたけど、でも、ブランドの新しくて高そうなのだった。ちゃんと仕事をもってるサラリーマンとか多いんだよな。中には医者とか教師とかもいたみたい。学歴高そうで、本もよく読んでるらしくて哲学みたいな話をよくしてる。俺は高校中退だし、なんか、住む世界が違う感じだった。居酒屋とカラオケ代を割り勘で払ったらぜんぜん金がなくなって、いつもみたいにネットカフェで夜を明かすこともできなくなっちゃったから、向こうの公園のギャルサーが踊りの練習やってる横で寝たっけ」
 それから脈絡のないことを、彼は唐突に喋った。
「ああ、そうだ。ネットカフェでよく見かけるおっさんがいて、どんなサイトを見てるんだろうと思って後から覗いたらぽえ村だったなあ。いつも朝までいるんだけど、あの人、ホームレスなのかな?」
 話が飛躍するのが、ある種の心の病の症例にあることを、ルネは以前どこかで聞いたような気がする。
 司 徳馬はsasuraibitoの言うことを聞いてはいるようだったが、言葉を返すことはなかった。
 詩ができたらしく、スケッチブックを開いて何か書き始める。
 sasuraibitoは、その様子を一瞥してから、また、独り言のようでもあるが呟きというには大きめの声で言った。
「ようし。俺もスケッチブック買って、やってみようかな。だけど、スケッチブックっていくらするんだろう。金あるかな。まあ、足りなければノートかなんかでいいや。百均で何か探すか」
 sasuraibitoは山手通り方向に歩き去った。ルネは彼が誰かに呼びとめられるのを期待しているように感じたが、ただ、そんな気がしただけだったかもしれない。
「あの若いの、真面目に働けばいいのに…、なんてことを私が言えた筋合いじゃないね」
 彼の姿が見えなくなってから、司 徳馬はこう言って小声で笑った。
 中年の夫婦らしい二人連れが並んだ詩を見ながら品定めをしているようだ。商売の邪魔にならないよう、ルネはその場を後にした。司 徳馬に軽くてを振り、sasuraibitoが行ったのと同じ方向に歩くうち、メモを預けるのを忘れたことに気づいたが、引き返すことはしなかった。

 ルネが山手通りを下って行くと、sasuraibitoは煙草の自販機の前で手のひらの硬貨を数えて小銭入れやポケットを探るのを繰り返していて、ルネに気づくと助けを求めるような表情を見せた。
「細かいのならあるよ」と言って、ルネは500円玉を渡した。
 sasuraibitoは自分の煙草を買うと「お兄さんのは何?」と尋ねたが、ルネは、自分は煙草を吸わないのだと答え、釣銭は返さなくていいことを身振りで伝えた。sasuraibitoは嬉しそうに小銭をジーンズのポケットにいれた。それから、ちょっと何か考え込んだようだったが、すぐに口を開いた。
「お兄さん、どこに住んでるの、この近く?ひとりで部屋借りてるの?それとも実家かなあ?」
 ルネは「いや、まあ」と曖昧な態度をとっておいた。自分のことを詮索されるのが好きな方ではないのだ。
「ああ、ところで、さっき言ってた、ネットカフェのおっさんだけど」
 ルネはメールフォームのURLを書いてあったメモを取り出し、彼に渡した。
「もし、また会ったら、これを渡してくれない?よかったら連絡してって」
 ルネは5千円札を彼に握らせ「ネットカフェ代カンパするよ」と言った。sasuraibitoはこれで、数日は夜を明かせるだろうが、その間に目当ての男に会えるかどうかはわからない。
「それはいいけど、知り合いなの?えーと、お兄さん、名前は?」
「URLを見れば、向こうはわかると思うよ」
 URLにはreneという文字列が入っているから、察しが良ければわかるはずだ。ルネは、それ以上会話が続く前に「ちょっと急ぐから」と歩き始めた。

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