
HTML殺人事件
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ミョンスクについて俺が質問する前にオモニは喋り始めていた。話が急に飛んで、コンピューターやインターネットについてだ。HTMLのタグのことだとか、将来的にウェブページの構成的な部分をHTMLで記述し、例えばテキストの色や大きさやフォントのような細部はスタイルシートで指定するというような話だったが、俺はたまにネットを覗くだけでホームページなど作ったこともないし、あまり内容を把握できなかった。
それと、ミョンスクの名前が出たこともあって、俺はあらためてオモニを始末しなければならないという気持ちが強くなり、そっちの方に頭が行っていたのだ。
文章はそこまでだった。これまでと同じでクリックすれば次に行けるようだ。でもルネは、かなり長い文章を読んできたので、ちょっと息抜きしたい気分だった。それで、続きを読むのは後回しにして、sasuraibitoのBBSを、もう一度覗いてみることにした。
新しい書きこみがあった。
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■名前:オークリ―
■タイトル:私も情報希望
やあやあ、先日、某漫喫でお会いしましたね。
情報って、あの時、私がお尋ねした例の件でしょうか?
でも、なんだかここ、ネットオークションみたいになってるようで(笑)
てことだと、最高額の人にしか情報は教えてもらえないことになりますが。
まあ、その方がいいかもしれません。
ところで、私も入札したいんですが、
よろしいですか?
sasuraibitoの自作自演のようにも、そうではないようにも思えた。ルネは、もう少し、事の推移を見た方がいいように思い、書きこみもしないでおいた。入札しておかないと情報を手に入れる可能性はないわけだが、まあ仕方がないだろう。
sasuraibitoには顔を見られているから、迂闊な行動をとらない方がいいような気がしたのだ。
ルネはそれまで読んでいた文章のページに戻った。しかし、これは、源さんが書いたものなのだろうか?もし、そうだとすれば、内容から、赤土のHNでぽえ村に投稿していたのは源さんということになる。
もっとも、文章はいささか現実離れした内容だし、事実を綴っているのかどうかはわからない。だからsasuraibitoも“小説を書いてるみたいですね。”と考えたのだろう。
たしかに、これだと、源さんが子供も含めた複数の殺人を犯していることになる。しかしルネには、この文章と関連のあるような内容をどこかで読んだ記憶があった。もちろん、それにしても事実が書かれていたのかどうかはわからない。
続きのページにジャンプした。
やがて話の中にオモニの夫が登場した。コンピューターやネットに関して喋ったのは、その伏線のようだった。
この家の中には彼女の夫の死体もある。夫は見た目、柔和な感じだったのだが、体は筋肉質だし、けっこうしぶとかった。激しく抵抗したので身体のあちこちを何回か刺し、戦闘能力を弱めてから頚動脈を切断した。
争ったのは2階に上がった所で、彼はそこから転げ落ち、階段の上がり口で絶命した。俺がその方向に一瞬目をやるとオモニもそれに倣ったが、すぐ話に戻った。
オモニの夫はコンピューターやインターネットにかけて、かなりのスキルをもっていたらしい。「最近はそうでもなくなったけど、少し前までのネットはひどかったわね。素人がプログラミングしたバグだらけのアプリやCGIが恥ずかしげもなく使われてて」オモニは夫がそういった“厨房”ではないことを強調し、彼が作ったウイルスやスパイウェアその他のクラッキングツールが送り込まれたコンピューターの内部でシステムやデータを破壊したり、中にある情報を盗み出したりしたことや、フリーのメールサービスでは、文章中にあるキーワードによって選択されたコピーが管理者に送られるシステムを作り、その情報をもとに実はヤクザの企業舎弟であるクライアントが不倫や万引きや詐欺やその他の後ろめたい行為を行っているユーザーを恐喝してかなり儲けたことなどを自慢げに喋った。饒舌に話している間、オモニの表情には恍惚の色が浮かび、俺はそれが、先天的な犯罪者の性向をもつ人間と向かい合っている時に見るもののようだと思ったりした。
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